2015/03/16 15:43
「はじまり」
私達の地元、青森は野菜の宝庫です。
そしてがこの野菜達は品質レベルも高く、とっても美味しい。
そんな野菜から出来たインクや描画材があったのなら、
青森の魅力を新しい形で全国にアピール出来るのではないか?
と、思いついたのです。
「野菜色を求めて」
元々は広告等のデザイン業である私達は、文具開発は素人同然でした。
「野菜色の描画材」と言っても、いったいどういったものなら実現可能なのか?
仲間達と毎日アイディアを出し合いました。
いくつかの文房具や画材が候補にあがりましたが、中でもクレヨンは蝋で出来ていて、キャンドル作りにも似ている点が、もしかしたら自分達でも試作が作れるかもしれない?という僅かな可能性が浮かび上がり、野菜のクレヨン開発の道が決定しました。
「コンセプト」
私達は大手メーカーでもなく、小さな地方のデザイン事務所。
その強みは何なのか?
商品コンセプトを設定するにあたり、様々なクレヨンの市場調査をしました。
そこで見えてきた道が、 「他のメーカーにはない、ニッチな商品開発を目指す事」でした。
色の規格概念を取り外す事、すなわち、野菜の色なので緑色が多くなる事や、真っ青な青がほぼ存在しないので青色が無い事。
そんなクレヨン配色の常識を取っ払い、視点を180℃変える事をコンセプトとしてブランド化を目指しました。
「工場での試作開始」
初めは、人参、ほうれん草、カシス、かぼちゃ、竹炭、にんにく、藍、唐辛子、クチナシ、紅花等のパウダーで試作を試みました。
仕上がりの描き心地は、残念な事にとても悪く、市場に出せるレベルではありませんでした。
ボソボソとした固い描き心地で、ワックスと野菜粉末が混ざったカスが紙の上に残ってしまい、野菜色ではありますが安定的に描ける製品には遠かったです。
お客様に満足して頂ける製品とするのにはかなり難しいという事が分かりました。
「製品化を目指して」
何が問題なのかを検証した結果、野菜粉末の粒度が粗いため微粉化する必要があると判明。
また、製品精度を補うために、顔料を僅かに入れる事にしました。
既製品の野菜パウダーだと粒度が粗く、クレヨンに投入すると書き心地が非常に悪くなりました。また、果物のように糖分の多いものは、粉末にする過程で機械に固着してしまい、粉末化には至らなかったです。
固着しないような青森県産の野菜・果物を選定し、
細かいメッシュを通して微粒子粉末に加工するように調整しました。
更に微粉化へ向け改良を重ね、パウダー化に成功です!
「もったいない」を知る
パウダー化の試作をやりとりする中で、農家さんがせっかく生産したものでも出荷されずに廃棄されるものが多い事を知りました。
それは僅かな傷や、形が歪なだけで、品質は何ら劣る事のない野菜達です。
そんな現実を目の当たりにした私達は、出来るだけ残さを活用してクレヨン用の粉末にする事にシフトチェンジしました。
何よりエコであり原料費の削減、そして野菜のリサイクルにもなり農家さんにも喜んでもらえるハッピーな展開が見えてきました。
パウダー化した野菜は、例えば「きゃべつ」は収穫時に廃棄される外葉、「ながいも」はとろろ芋を製造する際に破棄される皮、「ねぎ」は出荷時にカットされる部分、「ほうれんそう」や「にんじん」は規格外や、傷がついた為に廃棄されるもの、といった具合です。
「ライスワックスとの出会い」
次の課題はクレヨンの主成分であるワックスの選定です。
石油系ワックス、動物系ワックス、植物系ワックスとクレヨンへ用いるワックスは多種多様なものがあります。
あらゆるワックスと、完成した野菜パウダーをミックスし試作を更に重ねました。
その際に精米する時に生成される「米油(ライスワックス)」という成分に着目しました。
通常は調理用油として販売されたり、廃棄されてしまうものです。
これが野菜パウダーとの相性も良く、描き心地もとても滑らかな仕上がりになりました。
そして何より、「お米とお野菜で出来たクレヨン」の新たな色の世界観や、
安心安全な成分やイメージが今まで観た事のないクレヨンの誕生を予感するものとなりました。
「パッケージデザイン」
試作品が完成しましたので、いよいよデザイン会社としての腕の見せ所です。
パッケージデザインやあらゆる販促グッズのデザインも急ピッチで進められました。
決してお子様だけをターゲットにした製品ではないので、パッケージデザインも幼児向けにはあえてせずに、内容色の野菜の色を各面に用いる事でシンプルでいて、製品の質の高さを印象づけるものに意識。
色の名前も使用されている野菜そのものの名前を採用。
緑色ではなく「ほうれんそう」、赤ではなく「とうがらし」、と言った具合です。
また楽しいプロモーションビデオも私達自身で撮影し、全世界にこの製品をアピールする準備を着々と進めて「おやさいクレヨン vegetabo」の第一弾は誕生しました。
内容色は、
「ほうれんそう」
「ねぎ」
「きゃべつ」
「とうもろこし」
「かぼちゃ」
「ながいも」
「とうがらし」
「やまぶどう」
「くり」
「たけすみ」
の10色。
「リリース」
私達は出来上がった試作品を多くのバイヤーに見てもらうために、日本でも指折りな規模の展示会「東京インターナショナル・ギフト・ショー」に出展。様々な商材が集う展示会で、バイヤーや小売店と繋がる貴重な商談の場所です。
当初、1日100名程度の来場を想定していましたが、予想以上の3日間で1,500名ものバイヤーらが集まった上、初日にマスコミの取材依頼を受け、展示会期間中に全国放送されるなど予想以上の反響を得ました。
結果として初回生産発売が2014年3月に発売され2週間で初回生産分の商談が成立しました。
すぐさま第2段となる、「おやさいクレヨンseason2」の製造に取りかかる事に。
大変お待たせする状況が生まれましたが、やっと2014年5月末に「season2」の発売開始。
季節は冬から春へと移り変わっていたので、第一弾とは同じ野菜の手配が困難だったのですが、あえてseasonごとに内容色が変わるのもまた面白いと考え、春の野菜を主に使用しました。
内容色は、
「ほうれんそう」
「こまつな」
「ふきのとう」
「ながいも」
「にんじん」
「かぼちゃ」
「りんご」
「くり」
「やまぶどう」
「くろまめ」
の10色。
順調に販売数が推移し、2014年11月には「season3」を発売する運びとなりました。
発売前にはその開発経過が、再び情報番組で全国的に放送され大反響を博しました。
現在発売中の「おやさいクレヨンseason3」は、パッケージを一新。
一冊の本をイメージした箱の表紙を開くと、そこにはおやさいクレヨンタウンが広がります。ギフトとしても益々喜ばれるような、高級感のあるパッケージを目指しました。
また使わない時はインテリアとしてもさりげなく飾れるようなものをイメージ。
おやさいクレヨンをお手に取って下さる一人ひとりの方の、
Storyを描いて欲しいという願いが込められています。
内容色は
「きゃべつ」
「ねぎ」
「ごぼう」
「とうもろこし」
「にんじん」
「りんご」
「カシス」
「あずき」
「くろまめ」
これからの入園・入学シーズンの贈り物としてもピッタリです。
送る方も受けとる方も幸せな気持ちになれる商品をお届け出来ればと思っております。